前年度の準備期間で活発な研究活動を行った結果、今年度になって一気に成果が集中することとなった。具体的には、連濁に関する収集したデータの分析方法について再検討したほか、追加データの収集も行った。その意見交換を通じて、連濁に関する2つの研究が同時進行的に進展していった。その一つはソウルの国際言語学者会議で口頭発表し(英文要旨は学会で配布された本に掲載されている)、さらに、その議論を修正拡大した論文が既に昨秋受理された。もう一つはJournal of Japanese Linguisticsに正式に受理された。いずれも、頁などは知らされていないが、次号掲載決定ということで大きな成果である。 また、それとは別に、連濁実験でやっかいな現象としてサ行、ザ行等は、濁音が摩擦音なのか、破擦音なのか、不明確な例として残っていた。これらの特性を考察している内に副産物として、日本語のサ行の音声学書における記述自体にばらつきを発見した。これについては単独の論考とし、切り離して、発表した。これは日本英語音声学会九州沖縄四国支部第8回研究大会での特別講演として招聘されたものである。さらに改訂版をロンドン大学のAshbyらと議論を重ねている。 もう一点、連濁を考察する際に問題となる語形論的考察として、重複形、オノマトペ表現などとの関連の研究にも取り組んだ。これは谷川俊太郎を中心とする月刊雑誌「国文学」(学燈社発行)のオノマトペ特集への依頼執筆による原稿となった。今回のプロジェクトは終了したというよりは、次の課題のほうが増えたといったほうが、いいかもしれない。
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