1.進行形に関する研究に伴い、研究対象とする各言語における動詞の意味論的性質をアスペクチュアルaspectualな観点から探ることを本年度の第1の課題とした。まず、現代フランス語において完了形(Perfect)を形成する際に、etreとavoirのどちらかが助動詞として選択されるという現象およびその意味論的基準と、現代ドイツ語で完了形が形成される際にseinとhabenの間で助動詞の選択が起こる現象とを比較対照して、両言語において、とりわけ自動詞から状態叙述を導く出すための意味論的条件にどのような相違があるのかを調査した。その結果、ドイツ語では動詞句全体の動作様態が助動詞選択の決め手になるのに対して、フランス語では、あくまでも動詞そのものの動作態様が単独で助動詞選択の際の決め手となっていることが判明した。 2.不完了アスペクトの1つとみなされる進行形という形式が、文法的に確立している英語においても、進行形が表現することができる意味には幅があること、また、言語によって同じ進行形であっても、使用されるにあたって意味論的条件や制約といったものが異なるという2点に着目し、進行形に当たる部分がドイツ語に翻訳される場合、原文のおける進行形が担う意味内容に応じて、ドイツ語において選択される表現形式が異なる可能性をつかむことができたので、今後はこの「原文における意味とドイツ語での表現形式の対応関係」および「ドイツ語における表現形式の分布」を体系的に示すことが課題の1つとなる。
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