研究概要 |
平成19年度は山西太原において、研究代表者及び研究分担者ともに「第三回晋方言国際研討会議」に参加し、研究発表すると同時に、中国北方方言(特に西北方言)に関する情報収集を行った。そして山西大学喬全生教授ら、現地の研究者の協力を得て、山西省嵐県において、同方言の文法(方向補語など)に関する調査を行った。また年度末から平成20年度初頭にかけて自費で、陜西省西安に赴き、陜西師範大学及び同大学に置かれている「西北方言・民俗研究センターの研究者と学術交流を行い陜西省方言の情報を収集。また?向東教授(陜西師範大学)らの協力を得て、陜西岐山県において方言調査を行なった。調査は先行研究を参照しつつ、音韻体系の把握から始め、基礎語彙を記録し、名詞に見られる特殊な重ね型(「局部重畳」という名称が与えられ、漢語標準語の名詞接尾辞「子」のような機能を持つ)の例を収集,分析を行った。また文法に関しては、既存の調査表に独自に手を加えた上で、完了アスペクトマーカー、持続アスペクトマーカー、補文標識、移動着点マーカー、方位詞といった複数の機能語が接続される動詞語幹・名詞語幹に融合する現象を記録し、考察した。動詞語幹・形容詞語幹の韻母別で調査を行った結果、岐山方言における融合現象のあり方の理解を深めることができた。それらの機能語の融合の条件、分離形(つまり、それぞれのマーカーが本来の音声形式を保持している形)の使用状況、そしてそれらの音声融合現象が文法体系全体に及ぼす影響(多義性など)への理解も深めることができた。この調査は先の嵐県の調査とともに、我々にとっては予備調査と位置づけられるもので、収集したデータの整理、分析を進め、問題点をピックアップした上で、詳細な調査票を作成し、平成20年度に引き続き調査を行うことにしている。
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