研究課題
本研究では、日本語、英語の削除に関する構文を取り上げ、言語理論に密接に基づいた実証研究を実現する。日本語、英語の母国語話者に内在する文法のモデルを理論的に構築し、モデルの妥当性を確認する実験を積み重ねることで日本語、英語母国語話者の言語知識とその獲得過程の解明に寄与する。具体的には句、節の省略、削除が関与する他の構文の調査も行い、それが言語獲得モデルにおいてどのような含意があるかを見極め、実験を行い、言語獲得・言語発達理論ひいては現在の文法理論に対して新たな知見を提供することが本研究の目的である。初年度である本年度は、まず海外研究協力者R.Thorntonが既に採集に着手していたFragmentsの2歳から4歳の英語母国語話者の発話データの研究結果報告(GALA2007)について、本研究の初期実験データとして分析した。英語の母国語話者が発声しない類の2歳児の発話が日本語の文法では適切な発話であるなど興味深い点が見られた。また、今後のデータ収集分析においての着目点についても討論を重ねた。日本語においても英語のFragmentsに対応する実験パラダイムを複数企画した。英語と日本語のFragmentsに関しては、前者はMerchant(2003)が間接疑問文縮約と同様の派生を経ていると主張しているが、後者は主に強調構文からの派生として分析される。このことに留意しながら、海外協力研究者を交えて実験計画の検討を続けており、来年度早々より実験が開始となる見込みである。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
『言語研究の現在-形式と意味のインターフェイス』, 開拓社
ページ: 471-481