本研究では、日本語、英語の削除に関する構文を取り上げ、言語理論に密接に基づいた実証研究を実現する。日本語、英語の母国語話者に内在する文法のモデルを理論的に構築し、モデルの妥当性を確認する実験を積み重ねることで日本語、英語母国語話者の言語知識とその獲得過程の解明に寄与する。具体的には句、節の省略、削除が関与する他の構文の調査も行い、それが言語獲得モデルにおいてどのような含意があるかを見極め、実験を行い、言語獲得・言語発達理論ひいては現在の文法理論に対して新たな知見を提供することが本研究の目的である。 本年度は、英語と日本語のPseudo-cleftsと束縛原理の相関に関して、理論的研究と実証的研究に着手した。まず日本語における理論的研究を行ない、日本語のPseudo-cleftsも移動による派生として分析されると主張する研究を論文にまとめた。英語における実証的研究においては、海外研究協力者Rozz.Thorntonを交えて実験計画の検討を重ね、Pseudo-cleftsと束縛原理の相関に関する複数の実験に着手した。この実験結果は平成21年度での発表を計画している。また、名詞句内でも指定部と主要部に一致現象が見受けられる場合にのみ削除が認可されるとするLobeck(1995)やSaito&Murasugi(1990)の主張を鑑み、日本語における名詞句内の指定部と主要部の意味的な一致現象における脳内処理の実証的研究結果を論文にまとめた。(IEICE TRANSACTIONS on Information and Systemsに掲載)
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