研究概要 |
研究初年度は,本研究テーマ遂行のためのさまざまな土台作りを行った.まず,必異の原則及び聞こえの階層に関する制約における「聞きにくさ」を定量的に扱うための知覚実験の準備段階として,発話速度,ピッチなどの条件を統制して音声刺激作成のために,先行研究から作成方法などの情報を集積した.実験では天井効果を防ぐために雑音を付加して知覚させるが,この雑音帯域やS/N比については予備実験を重ねて検討する必要があるため,そのための情報収集も行った,次に,これまでの言語理論において聴覚的制約や調音的制約がどのように扱われてきたかを調査した.この調査を土台として,最適性理論の精緻化を行った。理論の中の制約がどこまで複雑性を帯びることが可能なのか,複数の制約の結合可能性はどの程度なのか,制約の相対化の可能性の原理とは何かなどを,調音,聴覚両方の制約の観点から検討した。また,これらの制約の第一言語獲得における役割について,米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校のViola Miglio教授と共同で,日本語を母語とする幼児と複数言語を母語とする幼児の発話データの比較検討を行った.それらの成果は,国内外の学会(Confbrence on General Approaches to Second Language Acquisition)や学会誌(Proceedings of the 9th Generative Approaches to Second Language Acquisition Conference(GASLA 2007))及び書籍(『現代音韻論の論点』,『An Enterpdse in the Cognltive Science of Language等)に随時発表し,多方面から有益な助言,意見を得た.
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