研究概要 |
研究最終年度となる本年度は,集大成として以下の3点から研究を遂行した.まず第一に,これまで米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校のビオラ・ミグリオ博士や米国ウィラメット大学の藤原美保博士の協力を得て行ってきた第一及び第二言語獲得の知覚実験の結果からより精度の高い実験結果を得るための刺激作成を行った.この刺激を使用したさらに精緻化した実験は今後の課題としたい.第二に,上述の実験を基に「パラダイムの一貫性」,「間接的反証」,「照合性制約の役割」という3つの観点から,聴覚的制約と調音的制約の果たす役割を考察した.第三に,最適性理論の枠組みにおいて第一言語獲得と第二言語習得における獲得(習得)のアルゴリズムに違いがあることを,制約ランキングの違いに基づいて明確にした.特に上述の「間接的反証」を認識する能力は比較的母語獲得の遅い時期に獲得されるため,第一言語獲得において「間接的反証」が重要な役割を果たす制約ランキングの獲得は遅れる傾向にあることを提案し,また,既に母語獲得において「間接的反証」を認識する能力を持っている大人は,第二言語習得の際にもその認識能力を用いて容易に第二言語の制約ランキングを獲得できることを提案した.上記の研究成果は,米国マサチューセッツ工科大学言語学部や米国マサチューセッツ大学アマースト校言語学部等で発表し,現代言語学における第一人者であるD. Steriade教授,E. Flemming教授,M. Kenstowicz教授,A. Albright教授,J. McCarthy教授,J. Pater教授らから大変有益な助言を得ることができた.また,2011年3月5日にサンフランシスコ州立大学において開催された学会ICPLJ7において口頭発表を行った.
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