幼児の文理解に関して、オフラインの調査をもとにした分析を行なった。動詞句内における2つの目的語の語順に関する調査では、「対格-与格」の語順の方が「与格-対格」の語順よりも正答率が高いことが確認された。また、「情報の流れ」という観点から先行文脈を与える場合と与えない場合の比較を行なったところ、先行文脈を与えることで改善を見たのは「与格-対格」の語順であることがわかった。幼児には大人とは異なる語順選好があるが、その原因はこれまで提案されてきたIconicityだけの問題だけではないと思われる。その候補として、格助詞の獲得自体の遅れによる可能性があることを提案した。また、このことに関連して、関係節の理解実験を行なった。先行研究では幼児にとって目的語の関係節化の方が主語の関係節化より易しいとされていたが、そこでは格助詞の獲得という問題が検討されずにいた。格助詞の獲得と関係節の理解の関係を調べたところ、主格も対格も文理解の手がかりとして利用できる幼児にとっては、主語の関係節化と目的語の関係節化の間には理解の差がないことがわかった。大人の文理解に関しては、2つのオンライン実験を実施した。ひとつは、句の長さが文理解に与える影響に関して二重目的語構文を対象とした即時意味判断法による調査である。先行研究で主に対象とされてきた他動詞文と同じように、二重目的語構文においても基本語順「与格-対格」の方が「対格-与格」の語順より判断が速く「short-before-long」の影響があるという結果が得られた。もうひとつは、SOVとOSVの文理解に関する調査であるが、日本語においては初めてセルフペーストリスニング法を用いた調査を行なった。その結果は、現在分析中であるが、単純な他動詞文においても語順に関しての影響が認められている。この方法を用いた幼児のオンライン文理解実験を検討している。
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