平成19年度は、4年間にわたる本研究課題の初年度であった。そこで、今後の論文執筆に備えて、19年度はカンボジアにおける文献資料収集のための調査を2回にわたって実施し、収集した資料にもとつく学会発表を複数回行なうことに努めた。具体的には、夏期休暇中に4週間、カンボジアのプノンペンにおいて科学研究費補助金にもとつく調査を行ない、国立公文書館や国立図書館などで植民地期の語学教育や言語政策に関する資料を収集した。収集した資料は、語学教育の内容を詳しく載せている植民地期末期(1940年代後半から1950年代初頭)の教育雑誌や、教育政策の実態を示すカンボジア理事長官文書などである。さらに、本科学研究費補助金とは別予算であるが、春期休暇中に2週間、カンボジアで調査をする機会に恵まれたため、上記の国立公文書館や国立図書館での調査を継続した。 一方、学会発表としては、日本語による発表を計4回、英語による発表を計2回実施した。英語による発表のうち、平成20年1月22日に開催された2007 Ritsumeikan Asia Pacific University Conferenceは、開催場所が研究代表者の本務校であるものの、韓国のキョンヒ大学との共催による国際シンポジウムである。これらの学会発表の内容および発表時に受けたコメントにもとづいて、春期休暇以降、植民地期のカンボジア仏教に関する論文の執筆を進めている。植民地期の対仏教政策や仏教改革運動を正確に理解することは、改革派の僧侶が辞書の編集、正書法の確立、新造語の導入などに深く関与していたことから、本研究課題の推進にとって重要な意義をもつと考えられる。
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