研究概要 |
本研究は,日本語の連体節内の主語の言語化に関する「認知モード転換という観点に基づく一般化」の理論的妥当性を,(1)日本語,韓国語の通時的データ調査分析,(2)方言レベルでの両言語の振る舞いの調査を通して検証を試みるものである 本研究が対象とする名詞修飾節の構造に関して日韓語が示す明確な差異の一つは、属格主語の許容度である。日本語はかなりの許容度を示すのに対して、現代韓国語は殆ど許容しないとする文法記述が一般的である。しかし、本研究の代表者・分担者が過去に行なった予備調査では、韓国語南部方言話者の間で比較的容認度が高いことが観察された。また、インターネットでの検索を行なった結果、ソウル方言に代表される標準的韓国語においても、属格主語が無視することの出来ない頻度で出現することが確認された。そこで、韓国語南部方言の分布する地域の中心に位置する麗水で、名詞修飾節に属格主語が用いられる例文をまとめて予め準備しておいたquestionnaireを用いてインフォーマントの文法性・容認度の判断を引き出す作業を中心とするフィールド調査を行なった。その結果、予備調査で見られた言語観察は、概ね支持されることが確認できた。この調査結果は、これまで言語記述を修正する必要を迫る極めて重要なものである。従って、それに基づいて新たな記述を試み、可能な限りの理論的な分析を加えて、研究成果として口頭発表並びに論考の形でしかるべき場所に発表する予定である。
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