研究課題
日本語的発想と表現との関係について考察するために、本年度は、表現のしくみの解明に重点をおき、日本語談話の理論的考察、地域方言における談話展開の実証的考察、国内外研究協力者との研究会を行った。具体的内容は、以下の通りである。(1)談話は、言語的諸単位が同時結節され推進されることについて、その全体像をまとめた。意義と重要性は、動態的言語観である結節観から談話を考察したこと、談話の言語的性格を明らかにするとともに、日本語談話の結節法に関する全体的モデルを提示したことにあると考える。(沖裕子2008「談話論からみた「文」と「発話」」『シリーズ文と発話「単位」としての文と発話』)(2)談話展開には地域差がある。接続詞「それで」は関西方言に好まれるとされてきたが、東京方言とは意味が異なっており、「気づかれにくい方言」であることを明らかにした。また、長野県方言の「それで」は関西と同様の意味で使用されていた。意義と重要性は、談話展開に関与する特徴が他の特徴とどう連動するかについて研究する必要性を、具体的事例によって示したことにあると考える。(沖裕子2008「気づかれにくい方言「それで」」『方言研究の前衛』)(3)国内外研究協力者全員が参加する研究会を信州大学で開き、意見交換を行った(合同1回目)。海外研究協力者、姜錫祐(韓国カトリック大学)、趙華敏(北京大学)は、本研究会での討議内容を生かし、国際シンポの招待パネリストとして発表した(社会言語科学会国際シンポジウム、中国日本語教育国際シンポジウム、台湾東吾大学日本語教育国際シンポジウム)。意義と重要性は、本研究課題について、韓国日本語人、中国日本語人という第2言語習得使用者の研究視点を導入する国際的議論の場を形成し、討議を行ったことにある。
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『「単位」としての文と発話』(串田秀也, 定延利之, 伝康晴[編] ひつじ書房) 総頁265
ページ: 45-69
『山口幸洋博士古希記念論文集 方言研究の前衛』(桂書房) 総頁484
ページ: 304-322
http://fan.shinshu-u.ac.jp/kyouin/oki/