研究課題/領域番号 |
19520396
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
桑原 祐子 奈良女子大学, 全学共通, 非常勤講師 (90423243)
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研究分担者 |
中川 ゆかり 羽衣国際大学, 人間生活学部, 教授 (30168877)
宮川 久美 奈良佐保短期大学, 幼児教育科, 教授 (00132382)
渡辺 晃宏 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 教授 (30212319)
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キーワード | 言語生活 / 正倉院文書 / 訓読 / 国語資料 / 実用世界 |
研究概要 |
本研究「正倉院文書訓読による古代言語生活の解明」の全体構想は、正倉院文書を国語資料として位置づけることである。そのために、8世紀の古代日本語の実用世界における言語生活を解明することをその目的とした。この目的のために、正倉院文書中の請暇不参解グループについて、既に刊行した『正倉院文書の訓読と注釈-請暇不参解編』(一・二(桑原祐子編集)を基礎資料として、写経生桑内真公の言語生活の記述を行った。漢文として定型化された提出文書であっても、書き手の心理・立場が要因となり、漢語ではない、日本語特有の表現(待遇表現としての「侍」等)が表出すること、明言することを回避し、曖昧な表現が表出すること等を明らかにした。 請暇不参解に代表される文書類の文面には、独立した一人称代名詞(ア・アレ、ワ・ワレ)は殆ど使用されず、差出人の個人名が一人称代名詞の変わりに使用されること、親族名の表記にも、差出人の個人名が冠される表記パターンが定着していることを明らかにした。 正倉院文書は変体漢文で書かれた記録であるから、これまで所謂和語の資料としては評価されていなかった。しかし、本研究による同類文書のグルーピングの結果、病気の回復・治療に関する表現を帰納してみると、平安時代以降の表現とされていた語彙を奈良時代の正倉院文書中に確認することができた。加えて、奈良時代の病気の回復・治療に関する表現について、文章語と口語の違いを具体的に示すことができた。 以上の具体的な事例を通して、実用世界における古代言語生活の一端を明らかにすることができた。 また、平成20年度の刊行を目指して、「啓・書状」(担当は黒田洋子)「 造石山寺解移牒符案」の訓読と注釈の作業を進めた。
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