今年度は、本研究の最終年度として、計画通り、確認調査と資料整理・考察をなし、研究のまとめを行なった。 本研究によって、鎌倉時代という一時代の、京都という同一地域において、資料の位相差による漢字音の差が存することが判明した。その漢字音における位相差は、同一人物内においても、文献の性格・場の相違などの要因によって、存したことが確認された。 これは、推測される結果ではある。しかし、その予想を残存する古文献によって実証することは容易ではなく、従来、予測に留まっていたことがらであった。それを明示できたことは、本研究における最大の成果である。 また、本研究の基礎資料として、鎌倉時代における日本漢音資料の字音データベースを作成することができた。 今後も、本研究で蓄積したデータに基づき、諸資料の加点者、文献の性格・場の相違による漢字音の差を考慮して、漢字音を整理し、比較研究を続ける。本研究で、漢音において得られた知見は、呉音研究にも活かせるものと考えている。 本研究の成果は、研究代表者が所属する広島大学大学院及び教育学部において講義するとともに、講義で述べきれない内容や、基本的な字音データについては、研究科紀要・ホームページ等に発表することによって、公にする予定である。
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