初年度の計画を受けて、奄美諸島の以下の地点で、臨地調査を実施した。 1)鹿児島県大島郡あまみ市手花部 2)鹿児島県大島郡あまみ市名瀬 3)鹿児島県大島郡瀬戸内町古仁屋 の3地点である。それぞれの地点で、2泊3日〜3泊4日で調査を実施した。年中行事の観察そのものは、なかなか機会に恵まれず観察できていない。いきおい、習俗語彙の調査票に基づいた調査をすることとなった。次年度の与論町、喜界町、沖永良部島での調査には年中行事に実際に参加して記録につとめたい。 なお、葬送儀礼のビデオテープの文字起こしをおこなった。実際に、どのような場面でいわゆる標準語が使われ、どのような場面で方言が使用されるのかを明らかにできた。 また、社会構造と密接に関連する言語項目として敬語構造が考えられる。家単位の社会的関係(絶対敬語)によるのか、対人関係(相対敬語)によるのかを考察していくことも、社会構造と言語の変容の関わりを明らかにしていく上で重要なことが指摘される。従来の習俗語彙が、社会変容によってどのように衰退・変容していくのかといった、一方向性の見方をすこし広げる必要があることが理解された。研究の進展の上で重要な示唆を得た。 次年度においては、このような観点からも考察を深めていきたい。
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