主題マーカー「は」自体の研究が予定より進んだために、前年度の終わりごろから、「主題マーカーに限らず、従来国語学の世界で言われている係助詞・副助詞のような形式の存在自体もSOV型言語一般に共通して見られるのではないかという仮説を立て、2007年12月8日に第13回チベット・ビルマ言語学研究会にて、「景頗語の『mung(も)』と『she(こそ)』について」というテーマで短い発表をしたが、今年度は、主にこの仮説に関する検証を進めた。 研究を深めていくにつれて、まず前年度の口頭発表における「景頗語の『she』イコール日本語の『こそ』」という認識の甘さに気づいた。すなわち、「こそ」に訳されてよいケースが見られるが、全面的に「こそ」に対応するとは言えないのである。それで、景頗語の「mung」と日本語の「も」の対照研究に絞って全力を挙げて取り組み、両言語の「同類」を表す形式の文法的振舞い方がまったく同じであることを検証した。さらに、新彊大学の夏迪姫・伊布拉音准教授とともに、日本語の「も」とウイグル語の「mu」との対応関係を調べ、予期した成果を得、これで上述の仮説がほぼ適切であることを証明することができた。
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