本年度は、不定詞句をとるMP形容詞に、Agentive-TierとEvaluative-Tierの複層の語彙意味を仮定した。Sentientな項を主語としてとるMP-B構文では、主語はAgentであると同時に評価の対象でもある。また、不定詞句はEvaluative-TierのGround項により認可された。 さらに本年度は、MP-A形容詞のゼロ形態素分析を提案した。この分析でMP-A形容詞は、MP形容詞に受動的なゼロ形態素が付加した複合形容詞と分析され、基底で外項を欠く非対格述語となる。MP-B構文とMP-A構文のヴォイスの違いは、こうして受動のゼロ形態素によって説明された。 MP-A構文のof-NPは評価の対象に加えて、動作主役を担っている。MP-A構文に、しばしば、ofの代わりに動作主を表すbyが現れるゆえんである。二層の意味成分がもたらすMP形容詞のトータルな意味は、sentient項について、不定詞句を根拠として、その行為の様態的評価を述べることである。この意味から、不定詞句の行為を表す意味と、of-NPによるコントロールが帰結した。
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