研究課題
否定極性表現(NPI)の認可条件に関する研究は、統語条件に係わるものと意味あるいは論理条件に係わるものの2つに大別することができる。前者は、NPIとその認可子(例えば否定辞)との統語構造上の位置関係を巡って研究が進められ、両者の直接的なc統御関係ではなく、Cあるいはその指定部を舞台として成立する両者のc統御関係が認可の可否を決定することを支持する証拠が提示されてきた。一方、後者の研究は、下方含意(downward entailment)の概念を中心に進められてきた。本研究は、(1)節(TP)が担う命題情報とその上位節(あるいは、当該節が主節の場合には、その命題が表現される談話)との接触領域としての機能を持っているのだとRizzi(1997)が論じる「CP領域」の特性(っまり、FORCE)の一部として、この下方含意の特性を捉えること、および、(2)NPIが数量詞ではなく変更であり特定の演算子(FORCEu)によって束縛を受けなければならないという2つの提案を行い、NPIの分布に関する一元的な説明モデルを提示することを試みた。NPIはいわゆるQuantifier raisingを自由に受ける数量詞ではなく、特定のFORCE特性(つまり未成立の出来事unestablished eventを選択するC素性=FORCE_u特性)に対応する変項であり、(1)束縛子binderを必要とすると同時に(2)FORCE_u素性を持つCと構造上の関係を成立させることが求められる。これを満たす必要性から、NPIとその認可子の間に成立するc統御関係、他の演算子の介在効果(minimahty)、及び、下方含意という一般に意味的特性と捉えられてきた構文特性が、統語的側面から一元的に導出される。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Annual Research Report, Faculty of Literature & Social Sciences, Yamagata University 6
ページ: 35-50