研究概要 |
名詞句の指示対象が、字句通りの指示関係の範囲を超えて拡張される「概念拡張」の問題に関して、中でも特に比較構造における比較基準表現の概念拡張を中心として研究成果をまとめたが、その内容が国際雑誌(Cognitive Linguistics: Mouton de Gruyter: Berlin and New York)の第20巻2号に掲載されることが決定したのが本年の大きな成果であった(2008年5月に採用決定、出版は2009年5月の予定)。夏にはイギリスのブライトンで開催された国際学会で研究発表の予定であったが、事情で取りやめとなった。その代わりに、次年度(2009年度)の夏にUniversity of California, Berkeley校で開催される国際認知言語学会第11回大会で口頭発表を行うことが正式に決定している。本年度は夏以降、比較構造を離れてより一般的な文脈において、どのような場合に概念拡張が認可されるのか、という条件に関しての考察を続けた。因果関係文脈における例外的な概念拡張については、一方で例外的でありながらも、概念拡張の引き金(きっかけ)となる要素と、概念拡張対象となる参与者が同一の節内に存在しなければならないという局所性が認められるという点においては、他の概念拡張現象の場合と何ら変わるところはなく、この点においては決して例外的な表現ではないのではないか、と考えられる。本年度は公刊された論文はないが、印刷中のものが2編あり来年度に公刊される予定である。
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