当該年度の研究成果としては、投稿審査を経た結果Mouton de Gruyter(Berlin)が出版している国際認知言語学会の機関誌Cognitive Linguistics 20巻2号に"Comparative Standards and the Feasibilitv of Conceptual Expansion."と題する研究論文が掲載されたこと、『内と外の言語学』と題する単行本に寄稿した、これまでの研究の総括的内容を扱った論文が出版されたこと、および因果関係文脈における例外的な概念拡張の問題を扱った論文「概念拡張とテキストの結束関係」が単行本に収められて出版されたことが挙げられる。 当初目標としていた英語論文の投稿・掲載という目的は一応達成できたと考えているが、その反面クオリア構浩と概念拡張の関連性についての課題は手をつけられないままに終わることになった。これは、当該の問題以前に、一般的な概念拡張認可環境を考察することの必要性を感じたことから、因果関係文脈における概念拡張や、その他の例外的な概念拡張環境の考察を優先した結果である。 現在も例外的な概念拡張が認可されるのはどのような条件が揃った場合であるのかを考察している最中であるが、いずれ当初の目的の一つとしていたクオリア構造との関連性についても検証していく予定である。 このような研究は、これまでのメトニミー研究とは異なった視点からの取り組みであり、その妥当性の検証などはまだまだこれから時間をかけて行っていかなければならない分野であるが、着実にデータを集め研究を継続していきたいと考えている。
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