研究概要 |
これまで4年間の研究期間にほぼ全ての動物名の人間比喩義をリスト化し、それらに基づいてイヌ科、ネコ、鳥類、昆虫の人間比喩用法についての研究論文を発表した。研究代表者と分担者の既発表論文を各章として編集中の『英語動物名の人間比喩義の意味と構造』は8割を編集し終えている。当初計画にあった動物名のうち魚類・爬虫類・両生類名もリスト化を終えているが、その特徴的な用例の分析は現時点では未完である。これは2006年より英語メタファーの共同研究の一環として続けている研究代表者と分担者が中心となって進めてきた英語研究書の翻訳事業が、2010年4月より急速に進んで夏季に最終段階となり、そちらに時間をかけたためである。平成22年度の主な研究実績としては下の2点がある。 英語メタファーの諸相・用法をコーパスを使用して検証した近年の重要学術書Alice Deignan, Metaphor and Corpus Linguistics(2005, John Benjamins)の日本語翻訳書を、翻訳代表者として出版した(『コーパスを活用した認知言語学』(2010年9月、大修館書店)。本書には英語動物名の人間比喩用法や感情表現とメタファーの関係も詳細に論じられているため、研究代表者・分担者が本科研の研究課題を遂行しながら翻訳作業を通じてコーパスの利用方法を学び、その研究成果を翻訳書の脚注に盛り込むことができたため、本科研の共同研究が効果的に生かされた日本語訳となり、書評で高い評価を受けた。もう1件は研究代表者の専門分野の古英詩Beowulfのメタファー用法について論じた英文論文が国際シンポジウムの論文集に掲載されたことで、これら2件が認知言語学および歴史言語学関係の学界に大きな影響を与えたことは、研究代表者が2011年度より日本中世英語英文学会の副会長を務めることとなったことでも明らかである。
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