研究概要 |
本年度においては、平成19年度に引き続き、初期近代英語期における歴史語用論的観点からの文法化・主観化研究を進めた。最初に、談話標識であるLook youを取り上げ、その表現が代名詞のバリエーションによって、社会言語学的にどのような人物によって使用されるかを、初期近代英語期の劇作品を使って調査した。その結果、ただ単にyouとthouの代名詞の違いによって説明できないことを明らかにした。具体的には、Look youにおけるlookの意味が、「気をつける」の場合は、この表現の後に動詞を伴い、上流の登場入物から下層の人物に向かって用いられるのに対し、look自体にほとんど意味がなく文中や文末において談話標識で使われる場合は、下層の人物のセリフに多く見られるという結果となった。 また、Look thouの場合は、談話標識の例はなく、lookの意味としては、「気をつける」となり、上流の登場人物から下層の人物に向かって使われていた。さらに、Look theeの場合は、lookの意味は、そのほとんどが視覚的な「見る」という意味になり、これを使用するのは、召使や滑稽に描かれている人物であることが明らかになった。 また、1人称代名詞と思考動詞・認識動詞との共起した表現が、英語史の中でいつごろどのようにしてcomment clauseとして発達してきたかを劇作品を使って調査した。そして、I trust, I trowなどの表現は次第に減少していき、I suppose, I believeなどは次第に増加していく傾向が明らかとなった。
|