研究概要 |
本研究は、従来の普遍文法モデルに内在する問題点を洗い出し、それらの問題点を克服し、妥当なインターフェイスを備え、言語多様性と言語獲得を原理的に説明できる言語獲得モデルの備えるべき特性を明らかにすることをその課題とした。この課題について、本研究では具体的には、次の項目について調査・研究を行った(以下「構文」と呼ぶのは便宜的なものである)。 (1) 従来型の普遍文法モデルにおける仮説群を整理し、その潜在的な問題点を検討した結果、これまでの言語機能に関する仮説のなかで、特にインターフェイス(統語-意味,統語-談話,音韻-意味,etc.)の特性に関する仮定には、重大な問題があることを明らかにした。 (2) 言語多様性に関わる事象として、焦点化と談話に係わる言語事象の通言語的な調査を行い、その統語形式と解釈、談話的制約を調査した。また、普遍特性と変異可能性の解明に向けて、従来の普遍文法モデルの問題点を明らかにした。特に、WH構文と焦点化(疑問文の簡略応答や、感嘆文に解釈される名詞表現と焦点化など)、疑問応答における文断片と焦点化について調査し、その普遍特性と変異可能性を明らかにした。また、削除や照応現象が関わる各種構文について、通言語的に調査して、その類型化に向けた研究を行った。 (3) 言語普遍性と同時に言語多様性(多様な変異可能性)を説明することのできる言語機能の理論と言語獲得モデルが満たすべき条件を示し、豊かなインターフェイスを備えた言語機能のアーキテクチャーが必要であることを明らかにした。
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