研究課題の形式と意味のミスマッチを示す構文として、平成20年度は、まず英語の使役文、特にCause使役文とその受身文について考察した。従来、causeが非意図的使役しか表さないとか、受身文にはならないと言われてきたのに対し、英語母語話者やコーパスから多くの例を収集し、causeが意図的使役も表し、受身にもなることを示して、その適格性条件を意味的、機能的に分析し、『英語青年』2009年3月号に発表した。さらに日本語の動詞句前置構文に関して考察を深め、その構造と意味に関する制約を明らかにして、久野〓滝氏と共著で『日本語文法』8巻2号に発表した。また英語の動詞句削除に関して形式と意味がどのように関わっているかという点から考察し、『言語』2008年11月号に発表した。さらに、機能的構文論がどのような文法理論であるかを解説する形で、中島平三(編)『言語学の領域I』に発表した。 さらに次年度に向けて、否定現象や使役文、主語と動詞の一致に関して形式と意味にミスマッチが生じる現象を多数考察し、母語話者から多くの例を収集し、考察を深めた。これらを次年度には発表したいと考えている。また日本語には、「何を文句を言ってるの?」のような文のように、一見、目的語が2つあるように見えるにもかかわらず、「何を」が「どうして、なぜ」という意味で用いられる構文があるが、このような構文の形式と意味のミスマッチについても考察を深め、研究を行っている。この構文に関しても、本研究の研究期間内に発表する予定でいる。
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