| 研究概要 |
本研究では,生成文法の最新の枠組みである「極小モデル」において,重要な概念の-つである「位相」を取り扱っている。「位相」は,計算操作が稜階を追って循環的に行われる際の単位としての役割と共に,音声形式と意味形式へとそれぞれ「PF移送」(PF Transfbr)及び「LF移送」(LF Transfer)という操作によって,情報を送る単位としての役割も持つ。従って,一致・併合からなる計算操作及び音声解釈・意味解釈が,「位相」という統一的単位に基づき循環的に適用することが強制され,それによって計算上の効率性が高まることになる。「位相」はChomsky(2000)によって提案され,Chomsky(2001,2004,2005,2006)によってさらに発展した概念であるが,そこでは,「位相」となるのは意味的に命題である範疇,すなわちCP(補文辞句)とv_P(軽動詞句)であると主張されている。さらに,「PF移送」と「LF移送」は常にCPとv__Pのレベルで同時に適用されると主張されている。しかし,「PF移送」と「LF移送」は別個の操作であるので,同時に適用されなければならないというアプリオリな理由は存在しない。そこで平成19年度の研究では,「PF移送」と「LF移送」が派生の別段階で適用されると考え,この仮定により,これまで謎とされてきた英語の"do so"と"one"という照応形に関する言語現象に対して原理的な説明が可能であることを示した。さらに,この分析が,日本語の「かき混ぜ規則」の再構築化の説明へも拡大できることも示した。
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