本研究の目的は、日本語を第二言語とする者の会話能力を「具体的な実践を相互行為として組織化する能力」という観点から考察することを試みることである。具体的には、日本語第二言語話者が個々の相互行為の局面局面で相手と協働的に相互理解を達成し実践を行っていく様相を記述することを目指している。研究代表者の柳町智治は、初年度の調査で、飲食店でアルバイトをしている留学生が日本語によって互いにインタラクションしながらその場での実践を達成していく場面の分析を行った。同データの分析は特に、二人の話者が同時に同内容のことを発話する、「コーラス」、あるいは「リエゾン」と呼ばれる現象を対象とした。この現象の微視的な分析を通して、「言語形式が母語話者のように正確さで適切か」というこれまで一般的に用いられてきた基準ではなく、「会話への参加を調整する」能力として第二言語話者のインタラクション能力を見ていくことの意義を議論した。この研究成果は、2本の国内学会報告として発表された。 また、研究代表者の柳町が実験室における留学生と指導教員のインタラクション場面を、研究分担者の岡田みさをが母語話者によるボクシングジムでのインタラクション場面をそれぞれ分析考察した共著論文が「社会言語科学会」の学会誌に採択され、本年夏に刊行される予定となっている。
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