研究概要 |
本研究は、中国語を母語とする日本語学習者の産出する日本語の分析を通して〈主観的な事態把握〉の概念の日本語教育への示唆を明らかにすることを目的とし、科研2年度は以下のように研究を進めた。 (1)分析枠組みの調整と本調査の準備:平成19年度に実施した予備調査結果のうち、日本語母語話者と学習者で統計的に有意差が確認された項目を〈事態把握〉の観点から分析し、池上(2003,2004,2006a,2006bなど)の「自然な日本語」、「日本語らしさ」を司るとされる〈主観的な事態把握〉を指標する表現形式の分析結果について、日本認知言語学会第9回(2008年9月)で発表した。 (2)既存の日本語教科書分析の継続(近藤、姫野、足立) 平成19年度に行った既存の初級・中級日本語教科書の日本語訳(全訳)を用い、(1)の枠組みで教科書・教材の(事態把握)の傾向の分析を始めた。 (3)本調査の実施(近藤、姫野、足立) 次の要領で本調査を実施し、最終年度の対照分析の基礎資料を作成の準備を行った。 1)本調査の調査票作成:(1)の分析枠組みに基づき、予備調査の結果から本調査の詳細(調査対象、使用する視覚的刺激回答方法など)を決定し、適宜修正を加えた。 2)本調査の実施:中国在住の中国語母語日本語学習者約300名を対象に(3)-1)の調査票による調査を、海外研究協力者の協力を得て実施した。 調査実施地域:北京地域と西安地域 調査協力者数:当該地域の日本語学習者(主専攻・副専攻)計240名程度 調査協力機関数:10大学(内訳:北京市内9大学、西安市内1大学) ※海外研究協力者:彭広陸先生(北京大学外国語学院日本言語文化学部・教授)・孫敦夫先生(西安外国語大学・教授) 3)本調査の結果分析:結果のデータ化にあたり、彭広陸先生、孫敦夫先生より専門的な助言を得た。また、翻訳課題については、王安先生(島根大学学国語教育センター)に専門的な助言とデータ化への協力を得た。
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