研究概要 |
本年度は非漢字圏学習者及び日本人12人を対象に脳磁図測定を行いM100(刺激提示後約100ミリ秒後),M170(刺激提示後約150-200ミリ秒後)の反応の大きさを比較した。本研究では真漢字(神)、偽漢字(部首とつくりの組み合わが存在しない)誤漢字(部首とつくりを反転)絵、ハングル文字を視覚刺激として用いた。非漢字圏学習者で経年的調査が行えたのは2人(カンボジアとヨルダン)だった。カンボジアの被験者は日本滞在半年と11ヶ月でM100に関しては、来日後6ヶ月では偽漢字<誤漢字が来日後11ヶ月では偽漢字>誤漢字,M170は6ヶ月で偽漢字>誤漢字、11ヶ月では偽漢字<誤漢字であった。M100とM170は反対の結果であった。M170では偽漢字=真漢字であった。これはカンボジアの被験者では誤漢字に対する判断はできているが、偽漢字に関する判断はできていない可能性がある。ヨルダン人被験者は来日後1年目と3年目であった。ヨルダン人被験者はM100は来日1年ではハングル文字のみ低かったが、来日3年目ではハングル文字と誤漢字が低く、特に誤漢字は真漢字の40%程度であった。M170では来日1年目ではハングル文字と誤漢字が高かったが、来日3年目では絵、ハングル文字、誤漢字が低く、偽漢字と真漢字はほぼ同じであった。ヨルダン人の例は来日3年目でM100という早い段階で誤漢字を漢字として却下しているが、偽漢字と真漢字の区別はできていないことを示唆している。日本人の場合、誤漢字は簡単に漢字として却下し、偽漢字には偽字効果(偽漢字に高い反応)がでると予測されたが、3人で偽字効果、5人は偽、誤、真漢字が同程度の反応、4人で誤漢字の反応が大きかった。これは日本人でも漢字様刺激に対して個人差があることを示唆している。
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