研究概要 |
本研究の目的は第二言語としての日本語小論文におけるgood writingとはどのようなものかを明らかにすることである。まず,ライティング評価の一致がなぜ難しいのか,パフォーマンステストとしての真正性は高くとも人間が介在するアセスメントという点から,その原因について検討した(田中・長阪,2009)。次に,good writingがどのようなものとして日本語教師に認識されているか,プロトコル調査を行った。具体的には,good writingの候補である2種類各6編の小論文を,日本語教師10名に総合的評価で順位付けをしてもらい,評価の際のプロトコルをとった。そのプロトコルと事後のアンケート調査の分析より,全体的なアカデミックらしさ(「表現力」や客観的で詳細な「サポート」)が,「課題の達成」や「主張」や「全体構成」よりも前面に出て評価される可能性のあることが示唆された。これは英語ライティングの評価とは大きく異なる点である。英語ライティングに全てを倣う必要はないが,日本語小論文において何が最も重要なのかについては,ある程度共通認識が必要であり,本研究によってライティング教育にも関わる重要な課題の1つが明らかになった。
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