ラテンアメリカの3カ国(ペルー、メキシコ、アルゼンチン)にて、帰国後10年以上を経た元日本留学生42名に聞き取り調査を行ない、留学の成果が長期的に個人や社会にどのように影響し、波及しているかを考察した。 その結果、個人への影響として、留学がどの専攻分野においても職業選択・進路に大きな影響を与えたことがわかった。教育分野の仕事においては、多くの場合、日本で学んだ責任感・努力の大切さ等を伝えながら、学生たちを厳しく指導している。研究においては、日本で習得した研究方法や当時の新しい技術がきっかけになり、先駆的な成果を挙げていることが多い。数年関連企業で働いた後、起業して成功している人もいる。日本語や日本文化を専門とする元留学生の場合は、日本語能力を活用したいがために、企業における通訳・翻訳担当といった域に留まる人が少なからず見られた。生活においては、日本で培った自律の精神や、大きな文化差を乗り越えたことにより、より自信を持って暮らしており、それらを次世代に伝える努力もしている。日本と母国の貨幣価値差を利用して奨学金の一部を貯蓄し、帰国後の生活基盤整備に充てたことにより発展につながった例も見られた。女性の場合、留学経験が独身や離婚につながったと本人が感じている例が少なからずあり、母国の男性優位主義との関係が述べられた。社会への影響として、留学の成果は職場や地域に波及していることがわかった。職場で指導的役割にいる年代となっているので、日本で学んだチームプレイや責任感を自ら実行し、同僚や部下とも分かち合っていた。 日本留学の後さらに他の国(いずれも西欧圏)に留学した人もあり、彼らについては特に、ラテンアメリカ・日本・西欧を見渡す国際的視点が培われ、評価され、昇進や活躍がめざましく、個人・社会への影響が大きいことがわかった。
|