日本語学習者のレベルを行動記述文で表示する目的で、日本語学習者にCan-dO-statementsを実施し、各レベルで達成されると考えられる行動の一覧表を前年度に暫定的に作成した。本年度はさらにこれを測定するための試験を開発し、Can-do-statementsの妥当性を検討した。 「話す」「聞く」の口頭能力のレベル判定のためにインタビュー・テスト及びロールプレイ・テスト、「絵を見て話す」テストなどのタスクを考案した。また、「読む」「書く」能力についても、選択問題ではなく実際に書記するタイプのテストを新たに開発した。このパフォーマンス・テストのタスクとCan do statements(多言語版)を215名の日本語学習者に実施した。 実施結果の分析から、今回開発したパフォーマンス・テストの信頼性は、話す・聞く技能に関しては0.85以上のα係数を得たが、読み書きに関しては0.70台で十分な信頼性は得られなかった。また、Can Do Statementとパフォーマンス・テストの間には、0.4から0.7の中程度からやや高いレベルの相関があることが確かめられた。これはCan Do Statementの妥当性を裏付けるとともに、技能別のパフォーマンス・テストを改善していくことにより、さらに高い関連性が得られる可能性を示している。 今回の調査で、Can Do Statementsとパフォーマンス・テストのような全く異なる形式の技能評価の測定値間にかなり高いレベルの関連性が見られたことの意味は大きいと考える。現在はまだ初級から中級レベルの学習者を対象とした検討にとどまっているが、さらに対象レベルを広げ今後検討していきたい。
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