1)日本語・日本文化研修生の学習ニーズを体系的に明らかにすることを目的に、渡日前の学習事前段階、日本での学習段階、教育課程を終える修了段階に大別し、詳細に分析した。とりわけ、学習ニーズの成熟の過程に着目し、日本に対して初歩的な関心を持ち始めた動機から修了段階に至るまでの、日研生の日本に対する関心や学習希望分野について検討した。更に、修了研究のテーマを切り口にしながら、日本に対する関心が学習と共にどのような専門的な発展を見せるかを分析した。全国アンケート調査の個別データの段階別の推移及び日研生に対するケーススタディ等を用いて、学習ニーズの成熟のあり方を分析し、ニーズを基にした日研生のタイプ分けを行った。 2)修了生に対する追跡調査や日本在住の修了生に対する聞き取り調査を実施し、修了後の段階である進路という視点からも、上述の研究結果を検討した。その上、上述した分野別学習ニーズや日研生のタイプ分けを元に日研生教育に必ず含まれなければならない学習項目を抽出し、教育モデルの一案を提示した。 3)担当教員及び日研生に対する聞き取り調査をまとめ、アンケート調査では明らかにすることが困難な日研生教育の成果や課題を明らかにした。担当者及び日研生の回答から制度の更なる発展の手掛かりとなる貴重な情報が得られた。これらは日研生教育制度の更なる発展の基礎資料として活用可能な情報である。 4)上述の研究成果を『日本語・日本文化研修留学生教育に関する全国的研究 調査報告書(pp.1-134)』として平成22年3月に刊行した。本報告書を調査協力者や日研生受け入れに関わっている教育機関などに送付する予定である。留学生教育に関わる、全国レベルでの渡日前から帰国後に渡る学習ニーズと成果に関する一貫した研究は管見では存在しておらず、本研究の成果は日研生教育のあり方を検討するための資料及び国費留学制度の意義を示す資料として有益である。
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