研究課題/領域番号 |
19520457
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村岡 貴子 大阪大学, 留学生センター, 教授 (30243744)
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研究分担者 |
仁科 喜久子 東京工業大学, 留学生センター, 教授 (40198479)
因 京子 九州大学, 留学生センター, 准教授 (60217239)
菊池 和徳 大阪大学, 理学研究科, 講師 (40252572)
熊谷 悦生 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (20273617)
惣田 聡 大阪大学, 工学研究科, 講師 (30322176)
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キーワード | 専門日本語教育 / 理系日本語論文作成支援リソース / ライティング / 論理展開パターン / 論文構造スキーマ / テキスト分析タスク / 結束性 / 引用 |
研究概要 |
論文やレポートに必須とされる論理の一貫性や段落内外の結束性は、文章の構成や表現に反映されるべき重要なものである。こういった首尾一貫性の欠如や論理展開上の矛盾は、1文内の文法や表現の誤用より重篤であると判断されるため、アカデミック・ライティングの指導上、優先順位の高いものと言える。 筆者らは、上記の点に配慮した理系日本語論文作成支援リソースの開発を目的とし、従来行ってきた理系日本語論文の論理展開や関連の表現の分析等の成果を参照しつつ、理系留学生が作成した文章に見られる問題の試験的分析、および論文作成支援リソースのあり方に関する検討を行った。そこでは、論文や研究に関するスキーマの有無といった学習背景の違いも観点に含め、学習者のライティング上の問題を包括的に検討する必要があることを論じた。問題のあるケースは、文章の構造および論理の一貫性を把握する技能とそれを表示する技能の欠如によると考えられた。また、試験的分析で対象とした、日本語能力が中級レベルの理系留学生の文章で見られた論理性把握の破綻による不整合と判断される問題分野として、1)文末モダリティー表現の問題、2)段落内外の文か段落の配列順序の問題、3)結論部の論述方法の問題、4)引用に関する問題の4ケースが抽出された。 以上の研究結果を総括すれば、文章での論理構造上の混乱の原因は、1)主張や引用等のモダリティー表現が機能する情報の「質」の判断、2)情報と情報の「関係性」の把握、3)上記関係性の「表示」の全て、または、そのいずれかの不成功にあると言える。また、論文作成支援の観点からは、文章作成者に対し、上記3点の意識化を明確に促す必要がある。論文作成に必要なあらゆる言語形式の学習は、特に1)2)が厳密になされた上で初めて有効になるものと考えられる。以上の知見は今後開発予定のリソースのデザインや学習項目の選定に役立てたい。
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