研究2年目にあたる平成20年度には、前年度に引き続き、インドネシア人キリスト教会での参与観察を重点的に行った。その際には、教会の牧師宅にもしばしば足を運び、教会の内外におけるキリスト教徒コミュニティについて、その機能や言語使用を中心に参与観察を行った。また、すでにある程度のラポールが形成されている複数のインドネシア人就労者の家庭を訪問し、家庭内の言語使用の実態について観察を継続的に行った。加えて、インドネシア人就労者の日常生活における言語使用の実態を把握するため、病院や役場、買い物などに同行し、参与観察や関連する聞き取りを行った。次に、大洗町とその近郊で働く大部分のインドネシア人の出身地であるミナハサ地方に赴き、日本での就労経験者をはじめその家族、友人などの関与者を対象とした聞き取りを行った。その際には、全体の日程のうちの何割かを日本での就労経験者の自宅もしくはその関与者の自宅での滞在に費やし、現地社会・文化の理解に努めた。また、現在大洗町のインドネシア人コミュニティの成員の中で中核を成している日系人について、主にミナハサ地方在住の2世を対象にその成立の経緯やアイデンティティ等についての聞き取りを行った。3月にはミナハサ地方における日本語教育の拠点であるマナド国立大学で行われた日本語教育国際セミナーに参加した。そして、大洗町のインドネシア人コミュニティの現状と随伴子女を含む成員の言語使用上の問題についてインドネシア語で発表を行い、研究成果の還元を行った。その他には、比較事例として、愛知県西尾市および韓国安山市のインドネシア人コミュニティを訪問し、聞き取りを始め教会活動の際の参与観察等を行った。
|