本研究では、『国境を越えて』[本文編改訂版][タスク編](2007、新曜社)を用いて、「タスク・シラバスによるコンテント・ベース教育」の教育効果を最大限に高め、言語教育の質的改善に資することを最終目的としている。そのため、初年度では、その基盤固めのために以下の研究活動を実施した。 1、『国境を越えて』[文法・語彙編]の作成・出版:2001年初版以降改訂を重ね、[本文編]から文法・語彙項目を切り離して独立させ、インデックスCDを付けた。大学だけでなく社会一般で使用頻度の高い語彙・文法の意味と用法を学習者自身が使いやすいように設計することで、自立支援型学習を進めた。 2、レポート・論文作成支援ツールの開発:これは5名による共同研究で進めているものである。山本は、『国境を越えて』[タスク編]で最終タスクとして課している「レポートとプレゼンテーション」の学習活動を補助するためのツールを開発している。その手始めに、レポート作成の初心者を対象として、レポート作成の構想段階における思考・作業プロセスの可視化を試み、その教育効果を検証した(その成果については2008年度5月開催の日本語教育学会で発表予定)。また、この可視化の結果、学習者自身がたどったレポート作成の過程を分析し、支援ツールの開発につなげた。 3、企業が期待する外国人「人財」の能力分析とその養成法について検討:4種の調査資料を用いて企業が期待する人材の能力分析を行った結果、企業の求める「ビジネス日本語」は、大学で求められる「アカデミックジャパニーズ力」との共通点が多いことを示し、「タスクシラバスによるコンテントベース教育」の有効性について検討した(2007年3月、専門日本語教育学会で発表)。
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