研究課題/領域番号 |
19520470
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研究機関 | 山形短期大学 |
研究代表者 |
澤 恩嬉 山形短期大学, 総合文化学科, 講師 (50389699)
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研究分担者 |
後藤 典子 山形短期大学, 総合文化学科, 講師 (50369295)
渡辺 文生 山形大学, 人文学部, 准教授 (00212324)
山上 龍子 山形短期大学, 総合文化学科, 非常勤講師 (90461722)
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キーワード | コミュニケーション教育 / プロジェクトワーク / カリキュラム開発 |
研究概要 |
本研究は、日本語初級学習者のより円滑な教室外活動を支援するために、プロジェクトワークという手法を取り入れ、学習者の教室外活動の実態を把握し、効果的な教室内活動を探り、カリキュラムを開発することを目的とする。 平成20年度は、前年度に引き続き、プロジェクトワークの実施および収録した談話データのデータベース化を行いつつ、前年度の結果を踏まえ、日本滞在歴別・日本語能力別に教室内指導法を変えた。具体的には、ある程度日本での生活経験があり、日本語能力が高い学習者には、教室外活動を行う前の教室内事前指導をできるだけ最小限にし、活動を行ったあとのフィードバックを中心に教室内活動を行った。フィードバックに関しても、教師側からの一方的なものではなく、なるべく学習者自身が自分の活動を振り返り、コミュニケーション上の問題点などに自分で気づけるような活動を行った。 一方、日本での滞在歴が浅く、日本語能力がそれほど高くない学習者の場合は、教室外活動を行うことに不安を抱いていることが多いことがアンケートの結果で分かった。このような学習者には、できるだけ活動を行う前の事前指導に重点をおき、教師側から情報提供を多くし、ロールプレイなどのシミュレーションを行うことによって、少しでも自信を持って教室外活動が行えるような支援を行った。具体的には、自由プロジェクトにおいては昨年度の反省を踏まえ、最初のうちはできるだけ成功体験を増やせるよう無理のないタスクを選んでもらい、日本語使用への自信を持たせるようにした。課題プロジェクトにおいては、段階的な事前指導を取り入れ、(1)会話の開始部における前置き表現を場面に応じて使えるようになる。(2)自分の名前や住所などの大事な情報を正確に読み書きできるようになり、伝えられるようにする。(3)電話会話に慣れるように電話番号の照会や初級の学習項目だけで行えるような簡単な問い合わせを行う。などのタスクを用意し活動を行ってもらった。 結果としては、ある程度日本での生活経験があり、日本語能力が高い学習者においては、振り返りの活動を中心に行ったことで、なんとなくできていた様々な活動から自ら問題点を見つけ、気づけるようになった。プロジェクトワーク終了後のアンケートにおいても、学習者から「大変役に立った」という報告が多数見られた。 日本での滞在暦が浅く、日本語能力もそれほど高くない学習者の場合は、事前指導を中心に行ったことで、学習者が自信を持って教室外活動を行えるようになり、最終アンケートにおいても「日本語使用への不安」の部分に変化が見られた。最終課題においても、昨年に比べ事前指導を行った部分においては、スムーズな会話のやり取りが見られた。しかし、新たな課題も見られた。相手の顔が見えない電話会話におけるタイミングの取り方や、相手の話を注意して聞き、それに反応できるようにするには、やはりある程度の日本語能力が必要である。場面にあった会話を予測し、必要とされるだろう語彙や表現を事前指導に取り入れることでこのような部分は改善できると考える。
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