2009年度は、日・独・米三国の学生から寄せられたアンケートへの回答をKJ法を用いて分析した。その分析結果とそこから得られた知見は、二つの国際会議と"SIETAR Japan"において口頭で発表を行った。本研究に関する論文は室蘭工業大学紀要第59号に掲載されているが、"Journal of IAIR-Conference"に投稿した論文も直に掲載される予定である。 回答を寄せてくれた学生の内訳は、日本人学生が470名、アメリカ人学生が224名、ドイツ人学生が211名であった。日本人学生の多くは「異文化」の概念を「異なるもの」、「外国文化」と受け取っていた。一方、アメリカ人学生の場合は「混合」と「交流」に、ドイツ人学生の場合は「三番目のもの」と「ハイブリッド」、「交流」に焦点を合わせる者が多かった。 このことは、「文化」の概念の受容の仕方と関連している。アメリカ人学生は、集団よりも個人に関するものとして「文化」を捉えていて、個人は「価値」や「伝統」のような文化的要素全体よりも重視されている。ドイツ人学生は、アメリカ人学生に比べ全体性や複合性を個人よりも重視している。それに対し、日本人学生は「文化」を「場所」や「慣習」、「集団」として捉えており、複合性という視点は見られない。 「コミュニケーション」の概念に関しても同様である。日本人学生の場合は、「付き合う」、「通じ合える」等、人間関係を表す具体的、現実的な言葉が大半を占めている。これはアメリカ人学生にもドイツ人学生にも見られない点である。彼らは「相互作用」や「交流」等、より抽象的な概念で表現している。 より良い異文化コミュニケーション授業のあり方等の詳細に関しては、成果報告書にまとめ、かつ室蘭工業大学紀要等にも新たな論文として掲載する予定である。
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