研究概要 |
本研究は, 従来, 第二言語/外国語のリスニングにおいて学習者要因の一つとして認められていた「リスニング不安」に代わる情意変数として筆者が心理的ストレス理論を援用して概念構成をおこなった「リスニングストレス」の生起のメカニズムを理論的根拠に, 外国語としての英語のリスニングにおけるその理解阻害効果を明らかにし, その対処方略の開発を試みようとするものである。 研究2年目の平成20年度は, 前年度に開発したリスニングストレス生起実験デザインの改良を図ると共により詳細なデータの収集を目指して遡及的発話思考プロトコル分析を導入した。そして, この改良型実験デザインを用いてリスニングストレスの理解阻害効果のメカニズムのモデル構築に取り組んだ。また, 国際学会において研究成果の中間発表をおこない, 発表に対して得られたフィードバックに基づいて研究方法の多様化を試みた。 リスニングストレス生起実験デザインの改良については, ストレッサーとして組み込んである難易度の異なるリスニング材料の組み合わせを開発当初の1回から複数回に増やすことで, 波状的に繰り返されるストレスの生起とその持続効果の観察に成功した。また, 遡及的発話思考プロトコル分析については, 被験者とのインタビューを通して得られたリスニングプロセスについての内省データの分析によりおこなった。その結果, リスニングストレスの循環的メカニズムの仮説が支持され, 理解阻害効果のメカニズムのモデル構築にあたっての基礎的な理論を生成することができた。さらに, 国際応用言語学会での研究発表では, 参加者から被験者要因のコントロールの必要性の指摘があり, それを受けて過去の実験データをもとに事例分析的アプローチにより再分析をおこなった結果, リスニングストレスの理解阻害効果のメカニズムにおける被験者の「意識」とワーキングメモリの関与の可能性が示唆された。
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