1.研究目的 本研究は、初等教育に外国語(英語)を導入する政策が実現するためには、どのような要因(教育的、社会的、経済的、言語的など)が作用しているのかを、タイと日本の小学校における英語教育政策を比較することによって、探ろうとするものである。具体的には、小学校への英語導入に関して、その政策上大きな違いを生じさせている要因は何なのかを明らかにすることである。 2.実施した研究活動 (1)タイでの現地調査(2週間:8〜9月)(2)タイの研究協力者の招聘と共同研究(12日間、10月)(3)国際学会(2008.1)、研究会(2007.12)への出席 3.平成19年度の研究成果 初年度の研究活動のまとめとして、英文報告書を研究協力者と共同執筆し、日本とタイの現状を比較して、以下の諸点を明らかした。 ・保護者や社会一般には、小学校への英語導入を求める声が強いことが共通して認められる。タイではそれを受けて文部省の強力な指導のもと、教科としての英語授業と現職教員研修が全国的に実施されているが、日本ではそのような積極的な推進政策がとられていない。 ・有資格の教員を確保することはタイでも困難な課題となっている。 ・両国とも私立小学校では英語教育はしっかりと根付いており、Immersion Programなど意欲的な取り組みが実践され、中等学校との連携もとれている。 ・タイでは、公立学校でも、主要教科を英語で教える試みが開始された。 ・タイにおける小学校英語についての賛否論は、日本ほど顕著ではなく、否定論や消極論はほとんど聞かなかった。 ・タイの英語教科書は、英語国で発行されたコースブックに基づいており、タイ人執筆者による独自の教科書が発行されていない。教材開発についての英語教育インフラは、日本と大きく異なる点である。
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