初年度は、本研究の基盤となる(1)韓国および日本のドイツ語教科書の収集と分析、(2)韓国および日本の大学におけるカリキュラムの調査を行った。 (1)では、平成19年度に広島大学において教養教育としてのドイツ語授業で用いられた教科書12冊と、韓国で出版されているドイツ語教科書7冊を対象に、それぞれの教科書に登場する語彙(異語数)をカウントした。このうち、内容や学習目標が似通った教科書、日韓それぞれ4冊ずつを対象に語彙の量的比較も行った。 (2)では、甲南大学、関西学院大学、大阪学院大学、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにおいて、それぞれの大学のドイツ語担当教員からカリキュラムや教材、学習者の到達度等について聴き取り調査を行った。また、韓国人留学生の協力を得て、韓国の主要な大学(ソウル大学、延世大学、梨花女子大学、淑明女子大学、嶺南大学)の第2外国語としてのドイツ語のカリキュラムや、大学入学試験でのドイツ語試験について、インターネットでの情報収集を行った。 これらの調査および分析により、韓国の教科書は日本の教科書に比べ2倍近い異語を含んでおり、学習される文法項目も日本に比べ多いことが判明した。また、韓国では高等学校において第2外国語が導入されているが、勧告の高校における語彙や文法の学習量は、日本の大学における教養科目としての第2外国語(週2時間1年間の学習として算出)の学習量に相当することも分かった。これらの中間的な分析結果は、『広島外国語教育研究』第11号(印刷中)に論文として発表した。 2年次以降の研究では、教科書と学習者の到達度について、ハンブルク大学のサマーコースの日韓参加者を対象にした聴き取り調査を行い、今年度に得られた知見とあわせて、より具体的な分析を試みる。
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