研究概要 |
本年度(3年目,最終年度)の目的は,(1)Semantic Patternと会話のトビックとの関連性を調査すること,及び(2)昨年までに開発した2種類のマルチメディア教材を併用し,効果を検討すること,の2点でめる。 (1) に関してけ,理論的検討から,いわゆる生活上のトピック(「休日」など)を対象とするよりは,Fillmore(1982)のいうフレーム(「伝達」「移動」たどの概念)を対象とした方が言語表現上の汎用性が高いと判断し,1つのフレームに含まれる意味要素(Frame Elements)がどのような結合様式(Valence)を取るのがを分析の観点とした。この方針により,目的であるSemantic Patternとトピック(フレーム)の関連性を分析した。 分析によって1つ興味深い事実が判明した。「移動」フレームに関わる。Slobin(1996)は認知的言語相対論の立場からスペイン語・日本語のような「動詞型」言語と英語のような前置詞・副詞を多用する言語とでは移動に関する描写が大きく異なることを指摘した。この指摘は本研究の日本人発話データでも観察され,ネイティブのデータと比較とて特に「起点(from)」の描写を省いたパタンが傾向として見られた。しかし蓄積してきた過去5年間の発話データを年度毎た精査したところ「起点描写の省略は授業での練習量に左右される」ことが判明した。このことは教育作用が言語相対論的差違を緩和しうる可能性を示唆する。 次に,(2)に関しては,昨年度までに開発した2種類の教材,すなわちFlashによるSemantic Pattern Practice教材と,Excelたよる上級教材を併用して実施した。結果は,基準とした2005年度(科研以前)と比して流暢性のみが優位であったが(p<.05),正確性と複雑性には有意差が見られなかった。これは昨年度,1種類の教材に絞って実施し2005年度よりも流暢性・正確性・複雑牲ともに有意であった結果よりも劣った。本年度は同じ学期に2種類の教材を使い,やや詰め込み式に指導したことが反省され,学習者は焦点が絞りきれず,また繰り返し練習・復習する機会も減少したと思われる。限られた授業時間内で適切な学習を成立させる教材の分量が今後の課題となった。 本年度の成果は九州英語教育学会(沖縄)で発表した。
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