本研究の目的は、効率的に書く力に転移する英文の読み方の指導法について、理論的、実証的検証を行うことである。具体的には、読み書きの関係についての研究で理論的に効果があるとされている英文の読み方を具体化し、大学の教室の指導で使えるチェックリストとしてまとめることが目的である。 平成21年度は、平成20年度に行った疑似実験の結果に基づいて、実験で使用した「英文を読むためのチェックリスト」に加えて「編集用のチェックリスト」と「校正用のチェックリスト」を作成し、実際の授業で使ってみて、これらのチェックリストを使った指導が学生の英文ライティングの向上につながるかどうかを検証した。最初の授業で学生に書いてもらった英文(pre-test)と最後の授業で同じ条件で書いてもらった英文(post-test 1)を比較し、さらに、pre-testと学生が何度か編集を行った後の原稿(post-test 2)を比較したところ、どちらの比較からも学生の英文ライティングの質には著しい向上が見られた。また、事後アンケートの結果からは、学生の多くがチェックリストを英文を読むガイドとしてもライティングについての情報を得るためのガイドとしても効果的だと捉えていることがわかった。英文リーディングやライティングに対する態度の変化についての質問には、多くの学生が英文ライティングのさまざまな面に注意を向けるようになったり、英文ライティング力をつける前提としての読むことの重要性に気づくようになったり、普段の英文リーディングにおいても文章の組み立てや英語表現にこれまでよりいっそう注意を払うようになったと回答している。 以上のように、本研究で作成したチェックリスト及び、チェックリストを使った授業は、擬似実験の結果から見ても教室研究の結果から見ても、効果があると言えるのではないだろうか。 なお、平成21年度の教室研究のまとめは、2009年11月に行われた第二言語ライティング・シンポジウム(SSLW)等で発表した。
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