本研究の最終目的である「日本の英語ライティング教育における自動採点ソフトウェアの実用性の研究とその利点を生かした授業、評価モデルの構築」の最終段階として以下の実験・検証を行った。本研究では、自動採点ソフトを単なる評価の道具として使うのではなく、その様々なフィードバック機能を利用して、指導を効果的にすると同時に学生の自律性を高めることを目標としている。初年度は世界で一般的に使用されている評価基準を盛り込みながら、自動採点ソフトを導入した授業モデルの有効性・実用性を検証した。2年目はその導入方法の最適化を求めて3つの授業モデル(授業外での使用、授業内での使用、その組み合わせ型)の有効性を比較し、学生の伸び、学生と教師の反応などを更に精査した。本年度はその結果に基づき、学生の学力、特性によって3つの授業モデルの有効性がどのように変わってくるかについて、統計的分析だけでなくアンケートやインタビューを使った詳細な質的検証を行った。同時に、より日本の大学の英語ライティング教育の実情に合った自動採点ソフトを将来開発することを念頭において、本研究に使用したCriterion(sm)以外のいくつかのソフトを実際に使用した授業を行い、どのような機能がもっと強化されるべきであるかを模索した。 今年は本務校におけるカリキュラム改訂の準備年に当たり、そのために初年度の世界基準の調査・研究において参考にした「ヨーロッパ共通基準枠(CEFR)をライティングの必修カリキュラムに取り入れた。カリキュラム開発過程で、日本の大学ライティング教育に必要な要素をCan-do Statements(詳細な目標及び基準)として体系化し、それに照らして自動採点ソフトを導入した3つの授業モデルを再度検証することで、各モデルの改善点がより明らかになった。 3年間の研究で得られた最も重要な知見は、「自動採点ソフトの使用によって文法や表現などの指導における教師の負荷を減らすことができ、教師がより重要な側面(論理的思考や批判的思考を必要とする分野、即ち内容の深さ、論理性、一貫性など)の指導と評価に時間とエネルギーを効果的に向けられる。」という点である。3つの授業モデルのうちどれが最適かという問題については、学生の特性、教師や指導環境などによって違う結果が得られたので、今後はどのような条件や状況においてどのモデルが最適かという検証を進めて行きたい。
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