研究概要 |
本研究では,英文テキストの読解のために,語彙サイズが決定的な役割を果たすという前提を立て,英語の語彙知識によってどの程度の読解が可能になるかを調査し,Can-do Listを作成することを目的とした。得られた結論は,語彙が読解の道具であるとする前提そのものが,成立するかどうか再検討が必要になった。しかし,本研究の結果,以下の点が明らかになったことは非常に興味深い。 1.語彙サイズの大きい学生が必ずしも読解問題で高い得点を取るとは限らない 例えば,大学入試センター試験の読解問題の場合では,推定語彙サイズが3000語レベルであっても,6000語レベルの学生よりも,読解テストの得点が高いケースがあった。しかし,分析の結果,推定語彙サイズ5000語に満たないと,大学入試センター試験の読解問題で十分な得点が取れない事例が多かった。この事実は,限定的ながら,語彙力で読解力を説明できると結論づけることができる。 2.テキストのカバー率を95%にするための語彙レベルと,読解テストで十分な得点を取るための語彙サイズの間にはギャップがある。 読解が十分に可能なテキストをカバーできる語彙レベルと学習者の語彙知識の間には,2000語程度のギャップが存在することが明らかになった。例えば,高校卒業段階では,約3000語を学習することになっており,テキストも3000語の語彙知識があれば,95%をほぼカバーできるが,実際に理解度を試す問題に正答するには,5000語の語彙知識が必要であった。同様に,アカデミックテキストは,約5000語でほぼ95%をカバーできるが,十分な得点を取るためには,6500語が必要なことがわかった。
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