研究目的に沿って、まず理論面の検証の一つwh疑問文に関する調査を行い、その成果を発表した(第7回日本第二言語習得学会)。次に、UG-based SLAの先行研究を見直し、英語の教育応用への可能性と必要性を述べ、その方向性を明確にした(第37回中部地区英語教育学会発表)。具体的にはMissing Surface Inflection Hypothesis(MSIH;Haznedar&Schwartz1997他)とRepresentational Deficit Hypothesis(RDH;Hawkins2005他)の英語教育への応用について言及した。次に、学習者コーパス(NICT JLE Corpus)を用い、その二者の妥当性について検証した。解釈可能素性と解釈不可能素性により習得に差が出るとするRDHの主張を、be動詞を中心に調査した。その結果、RDHよりはMSIHを支持する結果となった(LET中部支部秋季研究大会発表)。さらに、wh疑問文に関する調査の研究においては新たにデータを収集した。初級と中級学習者のデータから、習得過程における理論上重要な手がかりが見られることから、それをまとめ、発表する予定である(第8回日本第二言語習得学会年次大会。そのような理論面の研究と同時に複数の教授法の予備実験を行い、実験手続きの調整を行った。また、文法項目をさらに広く調査する必要性が生じ、どの文法項目が「指導」をして学習効果があるかについて、現在さらに広範囲の文法項目を調査中である。このようにほぼ研究実施計画通りに進めたが、本研究の基盤を支える理論面の追究が予想以上に時間がかかった。しかし、この理論面は今後の研究を左右する重要な点であると同時に、第二言語習得研究においても極めて意義のある点であるので、今後も理論と実証の両面の研究を慎重に進めていく予定である。
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