まず、これまで言語理論(特に普遍文法/UG)がどのように外国語指導法に応用されてきたのか文献調査を行ったが、そのほとんどが言語理論で用いられる「説明」を授業や指導の中で利用するといったものであった。しかし、「言語理論の説明」の説明は複雑であり、確かに現象の理解を助けることにはなるが、それらが習得につながるという保証はない。従って、本研究では、「説明」を利用するのではなく、言語理論から導き出される文法指導法を探ることにした。次に、理論的枠組が適切な文法指導法を予測するかを調べるため、文献調査と実験研究を中心に行った。具体的には、Missing Surface Inflection Hypothesis(MSIH ; Haznedar & Schwartz 1997他)とRepresentational Deficit Hypothesis(RDH ; Hawkins 2005他)の枠組みを、wh疑問文とbe動詞を用い検証した。本実証研究および過去の文献研究(例 : 自然習得順序など)を基に、MSIHとRDHを見直したところ、それらは部分的には支持できるが、具体的文法指導法を導き出すほどの予測力は持ち合わせていないと考えられた。一方、Zobl(1995他)が提案する「機能範疇」に基づく自然習得順序の説明が直接文法指導の効果を「予測する」上で多くの示唆を含んでいることが分かってきた。また、解釈不可能素性のみを持つ項目と解釈可能素性と解釈不可能素性の両者を持ち合わせるものとの区別、そして機能範疇に関わる素性の数、転移の問題なども、直接文法指導が役立つ項目とそうでない項目を予測する可能性が高いことが明らかになってきた(その検証の結果の一つは、第35回全国英語教育学会にて発表の予定である)。さらに、それらを検証すべく、できる限り多くの文法項目の直接指導の効果を調査が必要であることも分かってきたため、本研究のテーマを研究継続し、全国英語教育学会課題別フォーラムの研究チームとして4名のメンバーで同テーマを追究することとなった。また、さらにUGばかりでなく他の理論をベースにした第二言語習得研究の英語教育への応用として研究プロジェクト(中部地区英語教育学会課題別研究プロジェクト「第二言語習得研究の成果とその応用」)も同時に進めている。
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