研究概要 |
本研究課題は,(A)リスニングの構成要素の特定化を行い、さらに、(B)要素間に内在する関係を解明することを最終的な目的としている。研究期間初年度となる平成19年度は、リスニングの構成要素に関する理論的考察をベースに調査対象とする構成要素のリストを作成し、平成20年度から実施する本調査のための事前調査を行った。この調査では、1)語彙力、2)音素識別能力、3)文法性判断力、4)意味性判断力、5)単文復唱能力、と総合的リスニング力の関係を調べた。特に、2)の音素識別能力に関しては、様々なデータを得ることができた。例えば、音素識別能力を母音・子音のミニマルペアーの峻別能力で定義した場合、子音のミニマルペアーの方が相対的に有力な構成要素になり得ることなどが明らかにされた。しかしながら、偏相関分析の結果、リスニングの有力な構成要素と考えられるものでも、第3の要素の影響を受けて、表面的に相関関係が現れる場合があり、構成要素を特定するためには、様々な調査が必要であることが分かった。さらに、部分的には非線形的な関係(3次曲線的関係など)があることを示すデータも得られ、現在、リスニングやその構成要素の複雑性に関してより包括的な理論的枠組みを考察中である。一方、構成要素特定のための側定方法そのものにも検討を加え、信頼性および調査対象者の心理的負担の観点から測定項目の個数、また、妥当性の観点から測定の回数・スピードを検討しているところである。次年度は、先ず、事前調査のエッセンスをまとめ、それらを基に本格的調査に着手していく。
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