(1)資料集の作成-国内所在の朝鮮古代と中世の金石文拓本を総合的に把握すべく「朝鮮金石文拓本国内所在目録」の作成を進め、東洋文庫、天理大学図書館、大阪府立中之島図書館藏の拓本を把握した。 (2)金石資料の調査-国内では上記の3機関に拓本資料を調査した。次年度は東京文化財研究所、神戸市立博物館等で調査を進める予定である。また、福井市の福井県立美術館では金石資料と密接する高麗、朝鮮朝の仏画とその銘文を、下関市の住吉神社では朝鮮鐘1件を調査した。また、訪韓の機会を利用して、全羅北道の開巖寺と来蘇寺では梵鐘を、特には来蘇寺では文化財指定の高麗鐘を実見した。 (3)資料収集-訪韓の機会を利用して、関係資料の収集に努めたが、そのなかでも長年にわたり捜していた福岡県太宰府市の水城院が所蔵していた「高麗鐘」が韓国国立文化財研究所に寄贈されており、その調査報告書『〓(高麗梵鐘)』を入手したほか、得難くなった黄壽永先生著の「新羅〓(の)神鐘」(1994年5月、通度寺聖寳博物館)のほか、韓国文化財庁『韓国金石文資料集』(上・新羅〜高麗)等を入手したことは、次年度以降の本研究の進行に手引きとなり、有益である。 (4)研究交流-韓国国立中央博物館学芸部長の崔応天氏が浜田の勤務する大学院に井手誠之輔教授指導のもとに博士学位請求論文「韓国の梵音具に関する研究」を提出されたが、その副査として論文審査を担当した。崔論文は本科研の課題の進行にはまことに有益な知見と情報に満ちており、また、韓国の金石資料学の第一人者であり、文化財の保護と研究の第一線に立つ崔応天氏との旧来の交流をさらに深め得たことは、今後の研究の進行にはまことに喜ばしいことであった。
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