研究概要 |
(1)資料集の作成-平成19年度より作成している「朝鮮金石文拓本国内所在目録」に学習院大学東洋文化研究所所蔵分を追加した。国内の所蔵機関では拓本類の整理は十分に進んでいない現状であるが、目録の充実に努めている。 (2)金石資料の調査-〔拓本調査〕(1)学習院大学東洋文化研究所、韓国国立中央博物館にて「新羅聖徳大王神鐘之銘」等4件の拓本調査を行い、「11」項に掲げた論文を公刊した。(2)また、天理大学図書館において「新羅誓幢和上碑」等11件の拓本調査を行い、やはり「11」項に掲げた論文を公刊した。〔金石文調査〕他経費による訪韓の機会を活用して、韓国国立中央博物館,同扶餘博物館、扶餘邑内、ソウル市内・徳壽宮内、江原道鉄原郡等に碑文,仏像後背銘、梵鐘銘等を実見し、帰国後、銘文につき既成の釈文との対照,先行論文等との対照を進め新知見を得て、論文作成のネタを得ている。 (3)資料収集-訪韓の機会を活用して、関係資料の収集に努めたが、なかでも本年度は「韓国金石文拓本展」(韓国金石芸術文化研究会、2009年1月刊)や「韓国金石文法書選集」2,4(梨花文化出版社)等、国内では得難い資料を収集できた。 (4)研究交流-韓国国立中央博物館をはじめとして、各地の学芸研究士らの研究者とで研究と情報の交換を進めた。 (5)研究成果の公表-(1)「11」項の論文「現代日本語訳『新羅聖徳大王神鐘之銘』」は学会発表に基づいて成稿した論文であるが、771年に鋳造された著名なこの梵鐘の銘の国内初の現代日本語訳を通して、新羅盛代の漢文学の傾向と国家意識を分析した。(2)「11」項の「新羅誓幢和上碑の二字-薛仲業の来日をめぐって-」は「研究余滴」ではあるが、これまで「大暦之春」「奉使滄溟」と釈文された文字は「大暦之末」「奉使滄溟」と釈文されること、そのことにより、779年に来日した新羅使との日羅外交と交流の実相に-知見を提供した。
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