(1) 『日本に所在する朝鮮金石文拓本目録』の作製を継続した。本年度は佐賀県立名護屋城博物館、九州大学附属図書館の所蔵拓本を追加し、また『東文選』所載の碑銘を附録として加えた。 (2) 研究の公表では『知識は東アジアの海を渡った-学習院大学コレクションの世界-』(学習院大学東洋文化研究所編、丸善プラネット、2010年1月)に「学習院大学東洋文化研究所所蔵の高句麗広開土王碑拓本の資料的意義」(102~110頁)を担当・執筆した。また、武田幸男著『広開土王碑墨本の研究』(吉川弘文館、2009年4月)の書評を進めた。これは平成22年度に公表の予定である。 (3) 「劉仁願紀功碑」の碑文を(財)東洋文庫と天理大学図書館に所蔵する拓本によって調査し、その釈文を得た。これまで『朝鮮金石総覧』所載の釈文が殊に韓国では再活用されてきたが、『総覧』の釈文には拓本上の行を読み違えるなどの誤りがあって、その誤りを継承しているが、今回の調査ではこれらを訂正して、平成22年度ではその歴史学的研究報告を行う準備が進んだ。 (4) 靖国神社境内に佇んでいた「北関大捷碑」は2006年6月に韓国を経て碑石が建っていた原初の地である北朝鮮の咸鏡道吉州に返還されたことは記憶に新しい。この碑の拓本をまず佐賀県立名護屋城博物館に調査して、釈文を進めた。この碑文の研究は崔書勉氏のほかには進められておらず、撰者の鄭文孚の文集『農圃集』に所載される碑文との対照を進めた。
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