本年度は、研究者双方が、各担当分の資料調査をはじめ基礎的地理情報の収集・整理につとめた。具体的な研究実績は以下の通りである。 研究代表者の吉田厚子は、主として国内諸機関所蔵の地図・地球儀など器物資料の再調査を行い、新規購入の高性能デジタル一眼レフカメラを駆使して、関連資料のデジタル化保存と整理に着手した。また調査・蒐集した資料については、各所蔵機関ごとに、資料の種類による細目を設定して分類整理し、「江戸期における北方地理的情報関連資料目録」の作成を試みるための準備を進めた。さらに、収集済みの関連資料の翻刻作業も併せて進行させた。 一方研究分担者の吉田忠は、北方関係の地理情報を伝えると考えられる蘭書のリストと翻訳書の所在につき調査を進めた。またオランダを中心として、地球儀・天球儀製作の歴史とその製作の背景にある科学機器製作者の状況について調査した。それはこれらの製作者が天文観測機器、航海用器具、測量用機器を同時に製作しているケースが多いからである。この点は地図製作者についてもあてはまる。そこで、国内では関連文献が稀少であることに鑑み、大英博物館、オランダのライデン大学図書館、ロッテルダム海事博物館において、ブラウ、ファン・ケーレンを代表とする当時舶載されたことが判明している、あるいはその可能性の高い地図製作者や地球・天球儀製作者のアトラス(地図帳)など原物にあたって調査をおこなった。 なお上記の研究過程の中で生み出された関連研究成果は、各研究者が国内外の学術雑誌等で複数公けにしたほか、一般市民を対象とした、教育委員会等主催の講演会でも分かり易く公表し、成果の一部を還元することができた。
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